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配偶者居住権とは(2023/08/04修正)
配偶者居住権の評価方法とは(2023/08/04修正)
配偶者居住権のメリット(2023/08/04修正)
配偶者居住権のデメリット(2023/08/04作成)
配偶者居住権を設定できない場合(2023/09/14作成)
配偶者居住権を設定できない場合②制度開始前の相続・遺言(2023/12/13作成)
配偶者居住権を設定した方が良い場合(2023/08/07作成)
古家に配偶者居住権を設定するメリットはない?(2024/08/01作成)
配偶者居住権の存続期間について(2024/08/22作成)
配偶者居住権は登記しないといけないの?(2023/11/09作成)
配偶者居住権が消滅した場合(2024/08/27作成)
配偶者居住権設定登記の報酬(2023/08/06作成)
2020年4月1日から、配偶者居住権制度が開始しています。配偶者居住権とは、被相続人の
配偶者が、被相続人の死亡以後も、無償で原則終身住み続けることが出来る権利です。但し、
無制限に配偶者居住権が認められるわけではなく、以下の要件を満たす必要があります。
①被相続人が単独所有していた建物であること
→例えば、被相続人と被相続人の息子等と共有していた建物であった場合には設定
できません。
②被相続人死亡時に配偶者が当該建物に居住していたこと
→被相続人名義の建物が複数ある場合は、死亡時に配偶者が居住していた建物のみに成立し、
全ての建物には成立しません。しかし、配偶者が被相続人と同居していることまで求めら
れていませんので別居していても、別居先の建物が被相続人の単独所有であれば、成立す
る余地はあります。
③遺産分割協議又は遺言、遺産分割の審判で配偶者居住権の取得を認められたこと
→当然に又は配偶者の一方的な意思表示で成立するわけではないということです。
なお成立した後に、第三者に配偶者居住権を主張するためには登記をする必要があります。例えば
登記をする前に差押え等があった場合、差押権者等には対抗できませんのでご注意ください。
配偶者居住権についてのメリット・デメリットを説明する前に、まずは評価方法について説明します。
この評価方法が後々重要となってきます。配偶者居住権の評価額は、
建物の時価(固定資産評価額)−配偶者居住権付建物の所有権の価格
となり、この配偶者居住権付建物の所有権の価格は以下の数式で計算します。
耐用年数は木造建物は22年ですが評価上は1・5倍して33年で計算します。また存続年数を就寝としている場合は、配偶者の年齢に応じた平均余命(厚生労働省公表に基づく)を存続期間とし、存続年数に応じた複利は国税庁で公表されています。
では具体例を用いて計算してみましょう。
(例)妻70歳 建物の評価額2000万円 木造住宅で築10年経過している場合
存続年数は20年(平均余命が生命表によると20年のため)複利0 . 554
なので、
2000万円×3(33-10-20)/23 (33-10)×0.554 =144万5217円
このように、144万円が配偶者居住権付建物の所有権価格となります。
従って、配偶者居住権の評価額は1856万円となります。
なお、お気づきになった方もおられると思いますが、先ほどの例で建物が築15年
のように、
(経過年数+存続年数)>耐用年数
となった場合は、配偶者居住権付建物の所有権価格がゼロとなり、配偶者居住権の評価が建物
の固定資産評価額と同じになります。
配偶者居住権を取得するメリットは、自宅等の不動産が相続財産に占める割合が高い場合に
メリットがあります。
(例)相続人→妻及び子の二人のみ
相続財産→自宅(時価2,000万円)
預貯金2,000万円
妻及び子の法定相続分
各2000万円
上記の事例で、妻及び子供が法定相続分通りで分割する事になった場合、妻は自宅か預貯金どちら
かしか選択できません。自宅を選択した場合、預貯金を一切相続できませんので、今後の生活に不
安を残すことになります。一方預貯金を選択した場合、住み慣れた自宅を出ていかなくてはなりま
せん。そこで、配偶者居住権を利用する事によって、妻が自宅に住み続けることができ、かつ預貯
金の一部を取得する事も出来ます。これは、配偶者居住権の評価は、所有権の評価よりも低いから
です。先ほどの事例で、仮に配偶者居住権の評価が1,000万円だだったとしましょう。この場合、
妻が配偶者居住権を取得したとしても、本来の法定相続分2,000万円の内、1,000万円しか相続して
いないことになります。そして、相続していない1,000万円を、預貯金で相続する旨を主張すれば、
自宅に住みながら、預貯金の一部も相続できることになります。以上、配偶者居住権のメリットに
ついて記載してきましたが、メリットがあれば当然デメリットもあります。デメリットについては
別の記事で記載します。
配偶者居住権には、メリットばかりではなく、当然デメリットもあります。デメリットのうち、
代表的なものをいくつか挙げていきたいと思います。
①当該建物を売却できない
配偶者側からすると、所有権ではなく、居住権ですので、当然売却できません。また特約又は
所有者の承諾がない限り当該建物を賃貸することもできません。従って所有権を取得している
時のように、自宅を売却して施設に入所しようとする事が出来ません。一方所有者側は、自宅
を売却する事は可能ですが、配偶者居住権がついていると、第三者が使用・賃貸する事が出来
ませんので、事実上売却する事が出来ません(買い手が現れない)
②所有者側の負担が大きくなる。
→固定資産税及び都市計画税は所有者に課税されるため、配偶者居住権が設定されていると、
当該土地・建物を使用・収益できないにも関わらず税金は負担しなければなりません。建
物の通常の必要費は配偶者が負担すると条文で規定されているため、建物分の税金につい
ては、配偶者側に請求する事も出来ますが、土地分については請求できません。
③配偶者居住権登記を抹消するために配偶者の協力が必要な場合がある
→配偶者居住権が就寝ではなく、存続期間を定めた時は、存続期間満了によって消滅します。
この存続期間満了によって消滅したときは、配偶者居住権抹消登記を申請しなければなり
ません。この抹消登記は原則として所有者と配偶者の共同で申請しなければなりません。
もし、所有者と配偶者の仲が悪くなっている等の場合は、勝訴判決を得ないと抹消登記で
きなくなります。もっとも配偶者は抹消登記をする登記義務を負っているため、裁判自体
は所有者に有利に進みますが、訴訟費用並びに弁護士費用等の金銭的負担や精神的負担を
負わなければなりません。
配偶者居住権は、当事者の合意や遺言があればいかなる場合でも設定できるというわけではなく、設定
できない場合もあります。例えば下記のような事例です。
〇建物が被相続人と配偶者以外の者との共有となっている
配偶者居住権とは、配偶者が最長存命中は居住できる強力な権利です。被相続人の単独所有ではなく、共有持分しか有していない時まで、認めてしまうと共有者の権利を侵害することとなりますので、配偶者居住権は認められていません。逆に
〇建物が被相続人と配偶者の共有となっている
事例において、被相続人持分を配偶者以外の相続人が相続した場合は配偶者居住権を設定することが
認められます。これは、認めないと被相続人の持分を相続した相続人が配偶者に対して賃料相当額を
請求することが可能となってしまうからです。
配偶者居住権は、令和2年(2020年)4月1日に開始した制度です。そのため、令和2年4
月1日以降に生じた相続についてしか適用されません。さらに開始前に生じた相続について
は開始後に遺産分割協議で配偶者居住権を設定することもできないとされています。従って、
例えば、令和2年3月31日に開始した相続につき、令和5年12月1日に遺産分割協議を行い配偶
者居住権を取得させる旨の合意をしても効力がありません。さらに遺言についても
〇令和2年3月31日以前に遺言書で配偶者居住権を遺贈する
趣旨の条項を記載していても無効です。これは相続開始日が令和2年4月1日以降であっても
同様なので、注意しましょう。
配偶者居住権を設定した方が良い場合は、ずばり
〇子供等に所有権を相続させたいが、配偶者の居住権も確保したい場合
です。分かりやすく説明するために以下の事例をあげて説明します。
①子供名義にするが配偶者居住権を設定せずに配偶者が無償で居住するケース
②土地建物を配偶者名義にするケース
③土地建物を配偶者名義にし、配偶者が特定の子供に相続させる遺言書を作成するケース
④土地建物は子供名義にし、配偶者居住権設定登記をし巨樹するケース
①について
①は子供と残された配偶者との間で使用貸借契約が締結されています。この使用貸借契約は
賃貸借と比べると借主の保護が弱いのが特徴です。そのため、子供と配偶者の仲がこじれ
るなどし、第三者に売却されると住み続けることが困難となるリスクがあります。
②について
①と比較すると、所有権が配偶者にあるため居住できなくなるというリスクはありません。
しかし、子供側からすると配偶者が亡くなった時に再度相続登記をする必要があります。
この相続登記には相続人全員の同意を得なければなりませんので、相続争いが起こること
も考えられます。
③について
②と比較すると、遺言書があるため配偶者が亡くなった後、相続人全員の同意を得ること
なく名義変更できます。しかし、遺留分を主張される可能性があるので注意しましょう。
④について
①と比較すると、配偶者居住権が登記されていますので、所有権が第三者に売却・差押等
されても、居住権を主張することが出来ます。また既に所有権は特定の子供名義となって
いるため、配偶者が亡くなった後相続登記をする必要はありません。また配偶者の死亡に
より居住権は消滅しますので、遺留分の対象とならず、さらに抹消登記手続きも所有者の
単独で可能という点もメリットといえるでしょう。
このように、配偶者の居住権の確保と将来相続登記の手間削減の両立を図りたい場合は、配偶者
居住権を設定した方が良いでしょう。
配偶者居住権を設定しようとしている建物が古家の場合は、注意が必要です。「配偶者居住権の評価
方法」ンページでも記載しましたが、築年数が経過している建物は配偶者居住権付建物の所有権の
価格が0円となり、結果として配偶者居住権を取得しても、建物を相続した時と同じ評価額となりま
す。従って、当該建物が古家の場合、相続税対策や居住権を配偶者に確保したうえで、他の財産を取
得させたいということが動機ならば、メリットはないといえるでしょう。
しかし、全くメリットがないというわけではありません。別記事の「配偶者居住権を設定した方が
良いケース」でも述べたように、他の相続人に所有権を継承させたいが配偶者の居住権を確保したい
場合には、設定する対象が古家であっても配偶者居住権を設定するメリットは十二分にあります。
このように、古家に配偶者居住権を設定するメリットがあるかないかは、配偶者居住権を設定しよう
とする動機にかかっているといえるでしょう。
配偶者居住権の存続期間は原則として終身、すなわち配偶者が死亡するまでとされています。ただし、
遺産分割協議、遺言、家庭裁判所の審判で別段の定めをしたときは、その定めになります(民法10
30条)。
従って、遺産分割協議で「相続開始の日から10年」と合意することも可能です。なお、この存続期
間中に配偶者が死亡した場合は、その時点で配偶者居住権は消滅します。
ただ、配偶者居住権の存続期間を終身以外とすることには注意が必要です。それは存続期間の延長が
認められていないことです。存続期間終了後も配偶者が建物に住み続けるためには、別途賃貸借又は
使用貸借契約を所有者との間で締結しなければなりません。もちろん、存続期間終了時点で所有者と
良好な関係が保たれている場合は問題ないでしょう。しかし、関係が悪化している場合は退去しなけ
ればならなくなる恐れもあります。
このことから、配偶者居住権の存続期間を終身以外とすることは、慎重に検討しましょう。
配偶者居住権は当事者の合意によって成立し、登記が効力要件ではありません。しかし、第三者に
配偶者居住権を第三者に主張するには登記が必要です。ここでいう「第三者」とは当該建物の第三取得者や差押権者や担保権者等です。例えば
①被相続人Aが死亡し、相続人は配偶者B及び子Cのみ
②建物はCが取得し、Bは配偶者居住権を取得
③Cが当該建物をDに売却
というような事例でDに所有権移転登記がなされた場合、配偶者居住権の登記がなされていない時は、
Dに配偶者居住権を主張することは出来ません。
従って、配偶者居住権を取得した場合は速やかに登記をしましょう。なお、建物の所有者(上記の例ではC)は登記をする義務を負っていますので、拒否することが出来ません。
配偶者居住権が配偶者の死亡等によって消滅した場合、忘れずに配偶者居住権の抹消登記をしまし
ょう。配偶者居住権の抹消登記は消滅原因によって共同申請又は単独申請となります。
①消滅原因が配偶者の死亡以外の原因である時
→存続期間満了、放棄・合意解除等が該当します。このケースにおいては建物の所有者
と配偶者の共同申請によります。
②消滅原因が配偶者の死亡による場合
→このケースにおいては建物の所有者の単独申請により抹消することが出来ます。配偶
者の相続人に協力してもらう必要はありません。
このように、配偶者の死亡により消滅する場合は、抹消登記が簡単であるという点が配偶者居住権の
特徴です。
当事務所の配偶者居住権設定登記の報酬は以下の通りです。
(報酬)
〇配偶者居住権設定登記の報酬
→一律金4万円(税別)
上記に加えて相続登記の報酬が発生します。ただし、相続登記の基本報酬から
金1万円割引させていただきます。
(実費)
〇登録免許税
配偶者居住権設定登記→原則評価額×0・2%
相続登記→原則評価額×0・4%
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