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令和3年の民法等の一部を改正する法律の成立によって、不動産登記法も改正されました。その中でも特に重要な事項は相続登記の義務化です。ここでは相続登記の義務化について解説しています。
〇相続登記の申請が義務化されます
〇施行日前の相続も対象です(2022/10/11作成)
〇相続の開始及び所有権を取得したことを知った日とは?(2022/10/12作成)
〇遺産分割協議がまとまらない場合は(2023/03/03作成)
〇相続人申告登記後に遺産分割協議成立した場合(2023/04/29作成)
〇相続人申告登記に関する注意点(2023/07/05作成)
〇将来罰則が強化される可能性は?(2023/06/05作成)
〇数次相続が発生して相続人が多い場合(2023/07/10作成)
〇義務化の対象外となる「正当な理由」とは?(2023/09/27作成)
所有者不明土地に対する対策として、不動産登記法が改正されました。その改正案の中で、特に重要な改正内容が相続登記の義務化です。今現在、相続登記の申請期限はありませんが、この改正案では、相続の開始があったこと及びかつ当該所有権を取得した日から3年以内に相続登記を正当な事由がある場合を除いて申請しなければなりません。そして正当な事由な
く申請を怠ると10万円以下の過料に処せられます。従って、
「忙しくて、相続登記をするのを忘れていた」
「財産的価値が少ないので放っておいても大丈夫」
と相続登記をしないで、放置していると過料に処せられるかもしれませんので、お気を付けください。
相続登記の義務化は令和6年4月1日スタートということは別記事で記載しました。(詳し
くは「相続登記が義務化されます」をお読みください)通常法律の改正がなされると適用
対象となるのは施行日以降となります。そのため
「今発生している相続についての相続登記は義務ではない」
と勘違いしがちです。しかし実は相続登記の義務化は、特別に
「施行日(令和6年4月1日)前の相続も対象」
となります。従って、いま発生している相続については、早急に相続登記をしておきま
しょう。なお施行日前に発生した相続については、原則施行日から3年以内となります。
例外的に、施行日後に相続の開始があったこと及びかつ当該所有権を取得したことを知っ
た場合は、その日から3年以内となります。
相続登記は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得した
ことを知った日(以下「相続等を知った日」とします)から3年以内にしなければなら
ないとされており、相続開始日ではありません。このことから「3年以内に相続登記を
申請しなくても、知らなかったと主張すれば良いんじゃない。」と考えた方もおられる
と思います。しかし、この考え方は危険です。「相続等を知った日」は、相続人の主
観ではなく、客観的に判断されます。つまり相続人が知らなくても、通常ならば相続
開始日に知ることが出来る状態ならば、「相続等を知った日」は相続開始日と判断され
ます。例えば、良好な親子関係を築いていた場合、親が亡くなったこと及び親の財産を
相続する立場となったことは死亡日(相続開始日)に知るのが通常ですので、「相続等
を知った日」は「相続開始日」と判断されます。「相続等を知った日」が「相続開始日」
と異なると認められるためには、以下のような事情等が必要と考えられます。
〇先順位の相続人が相続放棄したため、相続人となった場合
→(例)被相続人の子が相続放棄したため、兄弟姉妹が相続人となった場合
〇被相続人と絶縁状態にある場合
→(例)幼少期に親が離婚し、離婚してから、親(被相続人)と交流がなか
った場合
〇当該不動産が遠方にあり、相続人が所有権を取得したと認識できない場合
相続登記を3年以内にしなければならないといっても、相続人間で遺産分割協議がまとまらない
ことも起り得ます。この場合、正当な理由として過料の対象から外れるのでしょうか?
残念ながら、遺産分割協議がまとまらないことは正当な理由と認定されません。
この場合、法務局に相続があったことを申告すれば相続登記の義務を果たしたとしたものと見なされます。従って、遺産分割協議が成立していなくても、申告は可能ですので上記の通り正当な理由とみなされません。
相続人申告登記制度を利用して申告した後に、遺産分割協議が成立した場合は注意が必要です。
何故なら、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。この
3年以内に相続登記を正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料に処せられます。従って、
相続人申告登記制度を利用しても、遺産分割協議が成立した後は、相続登記義務化の義務がス
タートしますので、忘れずに登記しましょう。
相続人申告登記制度を利用して申告することのメリットは、相続登記の義務化に関する罰則の
回避しかなく、相続登記をしないで放置することのデメリットは残ります。つまり、相続人申
告登記をしても
〇売却することが出来ない
〇当該不動産を担保にしてローンを借りることが出来ない
〇数次相続が発生し、相続権者の数が増えていく・・・・等々
というデメリットがあることには変わりませんので、相続人申告登記をしたからといって安心
せずに相続登記の申請を行いましょう。
相続登記の義務化といっても、現段階では「10万円以下」の過料となっています。そのため、
「10万円以下であっても、過料に処せられても大丈夫」と思われる方も多いでしょう。
しかし、この規定はあくまでも現段階の規定です。
相続登記の義務化によって、所有者不明土地問題が改善に向かうと、この規定はそのままと
なる可能性は高いです。しかし皆が守らないため、改善せず又はより深刻化すると、国は法
律改正によってさらなる罰則強化に動くことも充分に考えられます。
従って、過料が少ないからと言って油断することは禁物です。特に相続財産に土地が含まれ
ている場合はなおさら早急に対処しましょう。土地は建物のように取壊しして滅失するという
ことがないからです。
相続登記の義務化では、正当な理由がないにも関わらずとされています。つまり、正当な理由
がある場合には、罰則は適用されないこととなります。この正当な理由には、
〇相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間
を要するケースなど(東京法務局ホームページより→こちら)
とされていることから、一見すると数次相続が発生した場合には正当な理由と認められる可能性が
あります。しかし、「相続人が極めて多数」とされており、具体的に相続人が何人以上になれば認
定されるのかは不明です。
従って、数次相続が発生しているからと言って、相続人の数が10人以下の場合は正当な理由になら
ないと思っておいたほうが無難でしょう。さらにたとえ正当な理由と認定されても、数次相続が
発生している場合は、早めに名義変更に向けて動かないと、相続権を有する者がどんどん増えると
いうデメリットは残ったままですので注意して下さい。
別記事でも触れましたが、相続登記の義務化においては「正当な理由」がある場合は対象外とされています。しかし、何が「正当な理由」に当たるかは不明なままでした。今般法務省から相続登記の義務化に伴う通達が発出され、「正当な理由」に当たる具体例が示されましたのでご紹介します。
①相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書
類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
→(解説)具体的に相続人が何名以上存在すれば、正当な理由になるのかは不明です。た
だ、相続人の把握等に3年間も有するとなると少なくとも50名以上の多数になる
場合等に限定されるため、勝手な自己判断は控えましょう。
②相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で
争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
→(解説)単純な相続争いで遺産分割調停が提起されている事例まで含まれるのかは不明
です。
③相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
→(解説)長期間入退院を繰り返している等の事情が必要かと思われます。
④相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法
律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その
生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
→(解説)DV被害にあってシェルターに逃げている状態等が考えられます。
⑤ 相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために
要する費用を負担する能力がない場合
→(解説)生活保護世帯又はこれに準ずる方が考えられます。
なお上記は、例示列挙とされているため上記以外でも個別具体的に審査して、「正当な理由」
を判定される場合があります。
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