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遺贈と相続との違い〜法律面から〜(2021/07/11作成)
遺贈と相続の違い〜共同申請or単独申請?〜(2021/07/12作成)
遺贈と相続登記の違い〜添付書類が違います〜(2021/07/12作成)
遺贈と相続の違い〜住所(氏名)変更登記が必要です〜(2021/07/13作成)
遺贈と相続の違い~代襲相続の適用~(2024/10/16作成)
権利証がない場合の登記手続きは?(2021/11/01作成)
遺贈と相続の違い〜登録免許税の税率が違います〜(2021/07/14作成)
相続税の2割加算(2021/08/27作成)
必ず遺言執行者を選任しなければならないの?(2024/10/16作成)
遺贈とは、遺言書によって遺言者の財産を特定の人に譲り渡すことをいい、いわば贈与契
約と近い性質を持っています。遺贈には、相続財産の全部又は相続財産の全部を一定の割
合で特定の人に遺贈する包括遺贈と、特定の財産を、特定の人に遺贈する特定遺贈の2種
類あります。では、遺贈は相続とどう違うのでしょうか?遺贈と相続における大きな相違
点を以下に挙げておきます。
①放棄の手続きが違う。
まず、包括遺贈の受遺者は相続人と同一の権利義務を負うとされているので、包括遺贈
の受遺者が遺贈を放棄したいときは、相続とおなじく原則として3か月以内に家庭裁判
所に放棄の申述をすることになります。
一方、特定遺贈については、このような時期や手法について制限はなく放棄したいとき
は、相続人に対する意思表示のみで済みます。なお、特定遺贈の受遺者が受諾又は放棄
のいずれの意思表示もしないときは、相続人等は受遺者に対して一定の期間を定めて、
承認又は放棄の意思表示をするよう求めることが出来ます。この期限内にいずれの意思
表示もしないときは、遺贈を承認したものとみなされます。
②相続人以外にも財産を譲渡すことが出来る。
相続は、当然相続人たる資格が法律で定められていますので。相続人以外が相続できま
せんが、遺贈については受遺者に資格はありませんので、相続人以外にも財産を譲り渡
すことが出来ます。
③特定遺贈の場合、受遺者が相続放棄をしても、受諾できる
特定遺贈の受遺者が相続人でもある場合、相続放棄をしても、当該特定遺贈の対象とな
っている財産を取得することが出来ます。一方、包括遺贈や相続させる旨の遺言におけ
る受遺者が相続人である場合相続放棄してしまうと当該遺言における対象財産を取得す
ることが出来ません。
遺贈と相続の違いは登記手続き面にもあらわれています。遺贈の場合は遺言執行者がいる
場合は、遺言執行者と受遺者による共同申請、遺言執行者がいない場合は、遺言者の相続
人全員と受遺者の共同申請となります。一方の相続は、実際に遺産分割協議書や遺言書等
によって相続した相続人が、単独で申請でき、他の相続人と共同して申請する必要はあり
ません。もっとも遺贈も相続人に対する遺贈に限って単独申請することが可能です(以前は
相続人に対する遺贈も共同申請でした)。
相続人以外に対する遺贈による所有権移転登記と相続登記では、共同申請と単独申請
の違いがあると別の記事で述べました。では共同申請と単独申請では具体的にどの
に違うのでしょうか?実は共同申請と単独申請では、登記申請に添付する書類が異なって
きます。ここからは相続と遺贈の添付書類における相違点を挙げていきます。
①権利証が必要or不要
相続→相続登記の場合、被相続人の同一性を証する書面として被相続人の
本籍入りの住民票を添付し、登記名義人の住所と沿革がつけば権利証
は添付不要です。従って相続登記においては権利証は原則添付不要の
取扱いとなっています。
遺贈→一方遺贈による所有権移転登記登記には売買や贈与とおなじく、権利証
が原則として必要となってきます。権利証がない場合は司法書士等による
本人確認情報の提供又は事前通知制度を利用することとなります。
②印鑑証明書の有効期限
相続→相続登記においても遺産分割協議書を添付する場合等には、相続人の印鑑証
明書には添付が必要ですが、有効期限はありません。
遺贈→遺贈による所有権移転登記の場合も、遺言者の相続人全員の印鑑証明書又は
遺言執行者の印鑑証明書を添付する必要がありますが、こちらは相続と異な
り作成(取得)後3か月以内という有効期限があります。
③戸籍謄本等の収集の範囲
相続→相続登記には遺言書や遺産分割調停・審判による場合を除いて、被相続人
の出生から死亡までの戸籍、及び相続人全員の戸籍謄本(抄本)又は、法定
相続情報一覧図の写しが必要となってきます。
遺贈→遺贈の場合は、原則として被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要です。
但し、遺言執行者が裁判所選任した者である場合は不要です。なお受遺者が
相続人である場合は、相続人であることが分かる戸籍謄本等が必要です
遺贈の場合、遺言者の最後の住所(氏名)と登記名義人の住所(氏名)が異なる場合
遺贈による所有権移転登記の前提として住所(氏名)変更登記が必要となってきます。
一方、相続の場合は、住所(氏名)が異なっていたとしても変更を証する書面を添付
すればよく、前提としての住所(氏名)変更登記は不要です。
なお、施行日は未定ですが、相続人に対する遺贈は、従前の共同申請から単独申請と
する改正がなされています。私見ですが、この改正規定が施行されると、相続人に対
する遺贈においては、相続と同様に住所(氏名)変更登記は不要になるものと思われ
ます。
相続では、被相続人の死亡以前に、相続人である子が死亡していた場合、相続人である子供に子供
(被相続人から見ると孫)が相続人となります。これが代襲相続とよばれる制度です。
一方、遺贈では代襲相続の適用はなく、被相続人より先に受遺者が死亡していた場合、受遺者の子
供に自動的に承継されることはありません。なお、このようなケースにおいて受贈者の子供に遺贈
させたいときは、遺言書にその旨を書いておく必要があります。
遺贈をされたい方は、先に受遺者が亡くなっていた場合に備えて、遺言書の作成を検討しましょう。
現段階(2021年11月)では、遺贈による所有権移転登記においては、権利証が
必要です。
では、権利証がない場合の登記手続きはどのようにすれば良いでしょうか?
この点、売買や贈与による所有権移転登記において権利証が無い場合と同じく
事前通知制度又は司法書士による本人確認を選択することになります。
登記義務者である被相続人は当然亡くなっていますので、被相続人に通知又は
本人確認することが出来ません。
通知又は本人確認の相手方は、遺言執行者がいる場合は、当該遺言執行者と
なり、遺言執行者がいないときは相続人全員となります。
但し、遺言書で遺言執行者の指定がなされていない場合でも、家庭裁判所に
遺言執行者の選任の申立てをすることが出来ますので、他の相続人の協力を
えられない等の事情があるときは。選任の申立てを検討されても良いでしょ
う。
遺贈と相続の違いは、所有権移転登記時に納める登録免許税にもあらわれます。
相続における登録免許税は、原則として固定資産評価額の4/1000です。
一方、遺贈は、相続人にたいして遺贈した場合は、原則として評価額の4/1000
ですが、相続人以外に対して遺贈した場合、評価額の20/1000となります。従っ
て相続人対する遺贈を原因とする所有権移転登記では、受遺者が相続人である
ことの証明書を添付する必要があります。この証明書は一般的には相続人の戸籍
謄本のみで足りるとされています。しかし、相続人が代襲相続人や直系尊属、又
は兄弟姉妹の場合は注意が必要です。
まず、代襲相続人の場合、被代襲者が被相続人より先に死亡していることが分かる
除籍謄本が少なくとも必要となってきます。
次に、直系尊属の場合ですが、直系尊属は被相続人に直系卑属がいない場合に限っ
て相続人となる第二順位の相続人ですので、基本的に被相続人の出生から死亡まで
の戸籍を提出して、直系卑属がいない事を証明する必要があります。
最後に、兄弟姉妹の場合ですが、兄弟姉妹は被相続人に直系卑属がおらず、直系
尊属も全て既に死亡している場合に限って相続人となる第三順位の相続人ですので
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本及び直系尊属が死亡していることが分かる
除籍謄本等を提出する必要があります。なお兄弟姉妹であっても被相続人の養子
となっている場合は、被相続人の直系卑属でもありますので、これらの書類の提出
は不要です。
遺贈は、相続人だけでなく相続人以外の者に対しても財産を譲渡することができます。
遺贈を受けた受遺者が相続人以外の第三者であってもに対して課税される可能性があ
るのは、贈与税ではなく相続税ですが、この場合相続税の2割加算に注意しなければ
なりません。
相続税の2割加算とは、相続や遺贈等によって財産を取得した人が、被相続人の配偶
者又は1親等の血族以外である場合、その人が納める相続税額に2割加算するという
という制度です。
従って、相続人以外に遺贈した場合はもれなく、2割加算の対象となります。また相
続人であっても、兄弟姉妹の場合、1親等ではなく2親等に該当しますので、2割加
算の対象となります。
また、孫であっても、代襲相続人となる場合は1親等扱いになりますので、2割加算
の対象となります。
被相続人の養子については、通常は2割加算の対象となりませんが、養子が孫で、孫
の実親(つまり被相続人の実子)が存命の場合は、2割加算の対象となります。
詳しくは、以下のページ又は税理士・最寄りの税務署にお問い合わせください。
相続人以外の者に対する遺贈については、特定遺贈もしくは包括遺贈を問わず、登記手続きは
受遺者と遺言執行者もしくは遺言者の相続人全員との共同申請となります。
では、遺言書に遺言執行者が記載されていな場合、遺言執行者の選任申し立てをすべきでしょ
うか?この点、相続人の数が少なく、かつ手続きに協力的な場合は、あえて遺言執行者を選任
する必要は無いでしょう。というのも遺言執行者選任の申立ては、実際に選任されるまで1~
2か月ほどかかるため、相続人が協力的ならば、相続人と手続きをした方が処理が早く終わる
からです。
一方、相続人が協力的ではない、相続人の数が多数、相続人に協力を依頼することがはばから
れるような状態なら、遺言執行者の選任申し立て手続きをするべきでしょう。
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