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夫婦間の契約に関しては、現行法では「夫婦間でなされた契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方が
取り消すことができる」(民法754条)とされていました。しかし、令和6年5月17日「民法等
の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号。令和6年5月24日公布)が可決成立し、こ
の規定は削除されました。この改正法は、公布日から2年を超えない日に施行される予定で、施
行されると、夫婦間でなされた契約も通常の契約と同様、簡単に取り消すことは出来なくなりま
す。
では、施行前に生じた夫婦間の契約についての取り扱いについてはどうなるのでしょうか?この件
についての措置については、前述の「民法等の一部を改正する法律」の附則第2条で下記のように
定められています。
「改正後の民法(以下「新民法」という。)の規定は、この附則に特別の定めが ある場合を除き、
この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、同条の規定による改正前の民法 (附則第
六条において「旧民法」という。)の規定により生じた効力を妨げない」
この条文をそのまま解釈すると、夫婦間の合意等の契約で施行日の時点で取消されていないもの
は、施行日以降は婚姻中であっても一方的に取消できなくなり、他方施行日よりも前に取消され
た契約についはその取消の効力は覆らないということになります。
このように、本改正によって、今後は夫婦間の合意等の契約は重要性を増していくことに変わり
ありません。
ただ、本記事作成時点(令和6年11月)では、夫婦間でした契約や合意等はいつでも取り消せ
る不安定なものであることに変わりありませんが、全く無意味なものではありません。例えば、
夫婦の一方による不貞行為に関して、誓約書を作成した場合、不貞行為をした事実を認める等の
記載があれば、将来離婚する際に不貞行為の事実を認定する重要な証拠となります。
このページでは、夫婦間の契約書・合意書に関する注意点などを解説していきます。
夫婦間等のトラブルで、夫または妻が他方へ、慰謝料を求める場合、早めに合意書等の作成にとりか借りましょう。夫婦間のトラブルで多いのが、不貞行為です。この不貞行為をした夫又は妻は、夫または
妻の配偶者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負い、不貞行為に基づく慰謝料は、この不法行為に基づく損害賠償責任にほかなりません。
ただ、この慰謝料はいつまでも請求できるわけではありません。民法では「損害及び加害者を知ったッ時」から3年を経過すると請求できないとされています(このことを時効と言います)。
つまり、不貞行為の場合、夫又は妻の不倫行為を知った日から3年を経過してしまうと請求できませ
ん。この3年というのは長いようであっという間に経過するので、慰謝料を請求することを考えてい
るなら早期に時効の完成を防ぐ手立てを考えましょう(このことを時効の中断と言います)。
民法では時効の中断事由の一つに「承認」が定められています。
夫婦間の合意書作成は、この「承認」にあたります。具体的には、合意書に不貞行為の事実と慰謝料に関する事項を記載しておき、夫及び妻が署名・捺印し印鑑証明書と共に保管しておけば、とりあえず3年で時効が消滅することはありません。なお、この3年の時効の起算点は不貞行為の時点ではなく、上記でも述べたように知った時であることに注意が必要です。従って、5年前にした不貞行為が今になって発覚した場合でも、慰謝料は請求可能となります。
ただ、過去の不貞行為を今知ったとしても、全てが請求できるわけではありません。
民法では、上記の3年以外に不法行為時(不貞行為時)から20年を経過すると請求できないと定め
られているからです。
(本記事以降、記載例では不貞行為を働いた夫婦の一方を甲、夫婦の他方を乙、不貞行為の相手方を
丙とします。)
夫婦間の合意書等作成のご相談の中で多いのが、夫または妻の一方が不貞行為をしてしまい、夫婦
関係の再構築を目指したいが、そのために合意書を作成したいというものです。
この不貞行為に関する合意書等では、記載すべき事項がいくつかあります。まず最初に入れるべき
条項は、「不貞行為の事実及び謝罪した」ことです。この条項を入れておくと、将来再構築を断念し
離婚する場合に、重要な証拠となります。記載するにあたっては不貞行為の①期間②回数③謝罪す
る旨を記載します。具体的には下記のように記載します。
「第〇条 甲は、令和4年〇月から令和6年〇月までの期間継続して、○○○○と複数回不貞行為
をしたことを認め、乙に謝罪する。」
このような条項を入れることで、甲が複数回不貞行為があったことを認めたという強力な証拠と
なります。なお、この書面があっても甲が「無理やり書面に署名・捺印させられただけであって不
貞行為の事実はなかった。」と主張する場合があります。そのため不貞行為を行ったことの確たる
証拠が手元にある場合は、念のため紛失しないように当該証拠も大切に保管しておきましょう。
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